f(x)=2 f(2x) を満たす関数について
問題
関数方程式f(2x)=\frac 12f(x)\quad(1)を満たす関数f(x)を求めよ.
発見的解法
考察1
x\neq0であるときを考える.f(x)=\frac 1xとすると,f(2x)=\frac 1{2x}=\frac 12f(x)より,(1)を満たす.
全ての実数xで定義されていることが必要であれば,f(0)=0と定義すればよい.f(2\cdot0)=\frac 12f(0)であるから,f(0)=0であることがすぐ分かる.
考察2
同様に考えて,f(x)=\begin{cases}c\cdot\frac 1x & (x\neq0)\\0 & (x=0)\end{cases}(cは任意の定数)と定義すると,このような関数は条件(1)を満たす.
考察3
では,このような関数のみが条件を満たすかというと,そのようなことはない.例えばf(1)=1と定めたとして,影響を受けるようなxはどのようなxか考えてみる.
x=2^{n}(nは整数)を満たすようなxについては,f(2^{n})=\frac 1{2^{n}}f(1)=\frac 1{2^{n}}が直ちに分かる.逆に,それ以外のxの値は定めない.
よって,次の関数は条件を満たす.f(x)=\begin{cases}-\frac 1x & (x:\,\mathrm{otherwise})\\ \frac 1x & (x=2^{n},\,n\in\mathbf{Z})\\ 0 & (x=0) \end{cases}グラフをかくと,ところどころで穴が開いたようなグラフになる.
考察4
別の関数方程式f(x)=f(2x)\quad(2)を満たす関数の場合,https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1487297239,https://oshiete.goo.ne.jp/qa/8700628.html等から以下のことが分かる.
実数全体で定義される連続関数であれば,f(x)=c(cは任意の定数)である.
x>0で定義される連続関数であるとする.g(x)=2\pi\cdot\log_{2}xとすると,g(2x)=g(x)+2\piを満たす.よって,関数f(x)=\sin\left(g(x)\right)は条件(2)を満たす.つまり,定数関数ではないが,条件を満たす関数はいくらでも構成できる.
考察5
関数方程式(1)を満たす,x>0で定義される連続関数について再度考察する.前項を利用すると,以下のような解が構成できる.g_{2\pi}(x)=2\pi\cdot\log_{2}xとすると,g_{2\pi}(2x)=g_{2\pi}(x)+2\piを満たす.関数f(x)=\frac 1x\cdot\sin\left(g_{2\pi}(x)\right)は条件(1)を満たす.
x<0についても,この範囲で連続な関数がf(x)=\frac 1x\cdot\sin\left(g_{2\pi}(\left|x\right|)\right)やf(x)=\frac 1{\left|x\right|}\cdot\sin\left(g_{2\pi}(\left|x\right|)\right)のようにすれば構成できる.
まとめ
関数方程式f(2x)=\frac 12f(x) (1)について,以下のことが分かる.
- 関数f(x)=0は,すべての実数で定義される連続関数で,条件を満たす.
- 関数f(x)=\begin{cases}c\cdot\frac 1x & (x\neq0)\\ 0 & (x=0) \end{cases}(cは任意の定数)は,x\neq0で連続で,条件を満たす.
- 関数f(x)=\begin{cases}c\cdot\frac 1x\cdot\sin\left(2\pi\cdot\log_{2}\left|x\right|\right) & (x\neq0)\\ 0 & (x=0) \end{cases}(cは任意の定数)は,x\neq0で連続で,条件を満たす.
- 不連続な関数であれば,いくらでも見つかる.
分かっていないことに,例えば以下のことがある.
- x=0で連続な関数で,定数関数f(x)=0でない関数は解として存在するか.
構成的解法
全ての実数で連続
f(x)が全ての実数で定義され,連続であるとし,関数方程式の解について考察する.
f(2x)=\frac 12f(x)より,任意の自然数nに対して,f(2^{n}x)=\frac 1{2^{n}}f(x)であることが数学的帰納法を用いて証明できる.よって,任意の整数nに対して,f(2^{n}x)=2^{-n}\cdot f(x)であることも証明できる.
f(0)=cとする.
関数はx=0で連続であるから,任意の実数\varepsilon>0に対し,ある実数\delta>0が存在し,\left|x-0\right|<\deltaを満たす任意の実数xについて,\left|f(x)-c\right|<\varepsilonである.以下,\varepsilon,\deltaは固定する.
\left|x_{0}-0\right|<\deltaを満たす,ある実数x_{0}を固定する.自然数Nに対して,x_{N}=\frac 1{2^{N}}x_{0}と定めると,\left|x_{N}-0\right|=\left|\frac 1{2^{N}}x_{0}\right|<\frac 1{2^{N}}\delta<\deltaである.また,f(x_{N})=f\left(\frac 1{2^{N}}x_{0}\right)=2^{N}f(x_{0})であるから,\left|f(x_{N})-c\right|=\left|2^{N}f(x_{0})-c\right|である.\\
(i) f(x_{0})=0のとき,\left|c\right|<\varepsilonであるから,c=0である.このとき\left|2^{N}f(x_{0})-c\right|=0<\varepsilonであり,条件を満たす.\\
(ii) f(x_{0})\neq0のとき,\left|2^{N}f(x_{0})-c\right|\geqq\left|2^{N}f(x_{0})\right|-\left|c\right|=2^{N}\left|f(x_{0})\right|-\left|c\right|である.\left|f(x_{0})\right|>0であるから,\varepsilon_{1}=\varepsilon+\left|c\right|>0について,2^{N_{1}}\left|f(x_{0})\right|>\varepsilon_{1}を満たすような自然数N_{1}が存在する.このような自然数N_{1}に対して,2^{N_{1}}\left|f(x_{0})\right|-\left|c\right|>\varepsilon+\left|c\right|-\left|c\right|>\varepsilonである.つまり,\left|f(x_{N_{1}})-c\right|>\varepsilonである.これは,f(x)の連続性に矛盾する.(背理法は嫌いだけど用いた)
従って,f(x_{0})=0のみ適する.
以上の議論は\left|x_{0}-0\right|<\delta を満たす任意の実数x_{0}について成り立つ.よって,\left|x-0\right|<\deltaならばf(x)=0である.
さて,\left|x_{2}-0\right|<\deltaとは限らない,任意の実数x_{2}を別にとる.任意の実数x_{2}に対し,x_{3}=\frac 1{2^{N_{2}}}x_{2}が\left|x_{3}-0\right|<\deltaを満たすような自然数N_{2}が存在する.このとき,f(x_{3})=0である.
よって,f(x_{2})=f\left(2^{N_{2}}x_{3}\right)=2^{-N_{2}}\cdot f(x_{3})であるから,f(x_{2})=0である.
以上より,任意の実数xに対してf(x)=0である.
\boldsymbol{x\neq0}で連続
x>0とx<0について別々に考えてよく,対称性からx>0のときだけを考えれば十分である.
x>0で定義される周期1の連続関数を任意に定め,h(x)とする.つまり,h(x+1)=h(x)を満たす.また,関数g(x)をg(x)=\log_{2}xと定める.このとき,任意の自然数Nに対し,h\left(g\left(2x\right)\right)=h\left(1+\log_{2}x\right)=h(\log_{2}x)=h\left(g\left(x\right)\right)である.h\left(g\left(x\right)\right)はx>0で連続である(証明略).
このとき,関数f_{1}(x)をf_{1}(x)=\frac 1xh\left(g\left(x\right)\right)と定める.関数f_{1}(x)はf_{1}(2x)=\frac 1{2x}h\left(g\left(2x\right)\right)=\frac 12\cdot f_{1}(x)であるので,関数方程式(1)を満たす.
よって,関数方程式を満たす関数が,任意の周期1の周期関数に対して,それぞれ異なるように構成できる.
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